法令用語「その他」と「その他の」の違い

目次

1. はじめに

法令用語の基礎知識として「その他」と「その他の」の違いを解説します。

「その他」と「その他の」は、似て非なるもので、法律上は明確に使い分けがされているため、両者の違いを意識することで法律の理解が大きく進むと思います。

2. 「その他」と「その他の」の違い

「その他」は「並列的例示」、「その他の」は「包括的例示」と呼ばれて、それぞれ役割が異なります。

「その他」の場合は、その単語の前後の単語は独立していて、後に続く単語とは別の概念として並列的に並べる場合に用いられます。

一方で、「その他の」の場合は、直前に置かれた単語が、後に続くより内容の広い言葉の一部として、その中に含まれる場合に用いられます。

「その他」のイメージ

 「A、Bその他C」という表記の場合、A、B、Cすべてが対等な関係、つまり、並列関係にあることを意味します。

 「りんご、みかんその他食べ物」の場合、「りんご」「みかん」と「その他」の後に記載される「食べ物」がそれぞれ独立した関係として並列関係になります。

「その他の」のイメージ

 「A、Bその他のC」という表記の場合、AとBはCの一例にすぎません。Cが一番大きな概念で、Cの中にAとBが含まれます。

 「りんご、みかんその他のくだもの」の場合、「りんご」「みかん」は「その他の」の後に記載される「くだもの」の例示として記載されており、「くだもの」の中に含まれた関係として包括的関係になります。

3. 税法における具体例

具体例1(交際費)

交際費は、租税特別措置法において、次のように規定されています。

租税特別措置法  第61条の4第6項 交際費等の意義  ・・・交際費等とは、①交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、②その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する③接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するものをいい、・・・ (丸番号・下線・太字は筆者加筆)

 ①から③は次のように図示することができます。

  • ①交際費、接待費、機密費その他の費用

 「その他の」ですので、「費用」は、「交際費」、「接待費」、「機密費」を包含する関係となります。

  • ②法人がその得意先、仕入先その他事業に関係のある者等

 「その他」ですので、事業に関係のある者等は、得意先、仕入先と並列関係となります。

  • ③接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為

 「その他」ですので、これらに類する行為は、接待、供応、慰安、贈答と並列関係となります。

具体例2(役員報酬)

法人税法第34条第6項(抜粋) 使用人兼務役員の意義  使用人としての職務を有する役員とは、役員(・・・)のうち、部長、課長その他法人の使用人としての職制上の地位を有し、かつ、常時使用人としての職務に従事するものをいう。
(下線・太字は筆者加筆)

 「その他」ですので、「法人の使用人としての職制上の地位を有し、かつ、常時使用人としての職務に従事するもの」は、「部長」、「課長」と並列関係となります。

具体例3(固定資産)

法人税法第2条第22号 固定資産の意義  土地(・・・)、減価償却資産、電話加入権その他の資産で政令で定めるものをいう。 (下線・太字は筆者加筆)

 「その他の」ですので、「その他の」の前に記載されている「土地」、「減価償却資産」、「電話加入権」は、「その他の」の後に書かれた「資産で政令で定めるもの」に含まれる例示を意味します。

なお、法人税法第2条第22号に規定される政令は次の通りです。

土地、減価償却資産、電話加入権が改めて規定されており、土地、減価償却資産、電話加入権は、「その他の」の後に書かれた「資産」に含まれていることが確認できます。

法人税法施行令第12条(抜粋) 
 固定資産の範囲 法第2条第22号に規定する政令で定める資産は、棚卸資産、有価証券、仮想通貨及び繰延資産以外の資産のうち次に掲げるものとする。
1 土地(土地の上に存する権利を含む。)
2 次条(※)各号に掲げる資産
3 電話加入権
4 前三号に掲げる資産に準ずるもの

※次条は、法人税法施行令第13条(減価償却資産の範囲)

参考文献

●吉田利宏著『新版 法令用語の常識』(日本評論社、平成27年)

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